しゅみは人間の分析です

いらんことばかり考えます

手延べ麺

ラグマンを作る

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ラグマンという食べものがあります。中央アジアで広く食されるもので、手延べ麺にトマト主体の汁をかけます。これはラーメンの祖先で、ラグマンの音がラーメンに変化したとされています。

レシピ

koizumipress.com

レシピは小泉武夫先生のものを使います。小泉武夫先生は発酵を専門とする有名な農学者・文筆家です。つまりレシピが信頼できます。

延べ麺に挑戦

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中力粉に塩と水、卵を入れて捏ねます。粉200g, 卵1個(55g), 水45g, 塩2gにしました。卵はほぼ水分なので水とあわせて100gになるよう調整しています。つまり加水率50%です。

塊になったら油を塗って放置します。

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そのうち球を潰して紐状にしてゆきます。最初は麺?球?が硬いのですが、触っているとなぜか柔らかくなります。粘土遊びのようです。

もうこれ以上伸びないでしょと思っても、放置しているとなぜか伸びてゆきます。グルテンはすごい。

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とはいえ、素人の技術ではぷちぷち麺が千切れてゆきます。ですが、気にせず細くしてゆきます。切れてるほうが食べやすいはず。紐の端を持ってぶらぶらさせると、重力で勝手に伸びます。グルテンはすごい。

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ある程度細くなったところで茹でました。うどんにしか見えない。しかし、うどんとは別物です。よく伸びるし麺には卵が入っています。

トマト汁

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香味野菜多めに好きな野菜を入れます。トマトと玉ねぎ、にんにくは外せないでしょう。にんじんもおいしいです。ピラフの源流たるプロフにもにんじんは登場します。きっと中央アジアではにんじんが欠かせないのでしょう。

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肉とにんじん、玉ねぎは焼きます。メイラード反応を起こして出汁にします。肉はラム肉と豚肉を使いました。全部焼けたら100ccの水を加えて煮込みます。味付けは塩だけ。鶏肉トマト煮込みの親戚料理です。

完成

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こうしてラグマンができました。麺にトマト煮込みをかけただけです。

感想

素朴で毎日食べられそうな味でした。ラム肉もトマトも味が強いはずなのですが、なぜか調和しています。

麺もよかった。打ち立ての麺がもちもちでよくスープと絡んでくれました。

妻氏はクミン・コリアンダーターメリックがあったほうがいい、と言っていました。中央アジア現地でも、ラグマンにこれらの香辛料を入れることがあります。

クミンなどを入れるとインドカレーに似た構造になります。トマトも玉ねぎ、にんにくもインドカレーと共通の材料です。

ということは、ラグマンはカレーうどんなのか……?たぶんそうなのです。ラグマンはインドカレーうどんなのでした。そりゃあうまいわけだ。

延べ麺の世界へ

ラグマンを作ってからというもの、麺が勝手に伸びてくれる体験が忘れられませんでした。YouTubeで手延べ麺の動画を観まくります。

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蘭州ラーメンは手延べ麺で作るようです。20kgくらいありそうな生地を男二人で伸ばしています。それを中国らしい人海戦術と流れ作業でラーメンにしてゆきます。かっこいい。

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そうめんには蘭州ラーメンに近い製法が残っています。よく捏ねて寝かせてから数メートルまで伸ばします。

手延べ製麺失敗

切り麺だけでなく、手延べ麺もおもしろそうだ、と思ってやってみることにしました。小麦粉はおもちゃです。

しかし、作ってみたらぜんぜん伸びない。千切れてばかり。ラグマンの麺を手延べしたときみたいにはいきませんでした。

原因は塩の入れ忘れでした。製麺2021 - non117's diary でやったような切り麺には、塩を入れずに鹹水だけを入れるのですが、手延べ麺には塩が不可欠なのです。勘違いをして鹹水だけ入れてしまいました。*1

グルテンは塩と放置でできる

塩はグルテンを強化し、鹹水は風味をよくする役割があります。パンも素麺も、うどんも小麦粉と水と塩だけで作れます。

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この動画でも同じことを言っています。粉の蛋白質量も鹹水も本質ではなく、塩と捏ね方が大事なのです。

さらに、生地を寝かせるのも欠かせません。フランスパンは生地を一晩寝かせます。この動画でも麺生地を一晩寝かせていました。麺の科学に書かれていたのですが、グルテンは時間経過によっても形成されるようです。時間がとれるならば、長く放置することで捏ねる労力を減らせるのでしょう。

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このお店でもグルテンを形成した生地を寝かせ、あとから鹹水を練りこんでいるようです。

絶対に手延べ製麺を習得したい

グルテンをバキバキに高めた麺はおいしいです。なによりグルテンをびよんびよん伸ばす工程が楽しい。というわけで、しばらくは麺を手延べして過ごそうと思います。設計したレシピは以下のとおり。一食分です。

  • 小麦粉80g
  • 水40g
  • 塩0.8g
  1. 材料を全部混ぜて球状の生地を作る
  2. ボウルに生地を入れてラップをする
  3. 常温で一晩放置
  4. 翌日がんばって練る(動画を観て真似をする)

気分で鹹水を塗ります。

参考文献

おまけ

*1:失敗した麺は麺棒で伸ばして包丁で切るとおいしく食べられました。製麺は失敗してもリカバリが簡単なことがわかった