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週報 2022/09/18 日本の家庭料理独習書

日本の家庭料理独習書

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調理方法の意味を問うた本

土井善晴氏のちょっと若い頃の本である。ほらこんなに若い。

ぴちぴちですね

この本は、土井先生の『一汁一菜でよいと至るまで』で存在を知った。

 同じ「調理」という言葉で表現されるのでも、プロのすることと、家庭料理で行う手法の違いを、意味を含めて明解にしていく。例えば、「ほうれん草のおひたし」なら、家庭料理のおひたしと料理屋のおひたし、また、栄養大学のテキストにあるほうれん草のおひたしと高校生の家庭科のテキストにあるほうれん草のおひたしは、それぞれ全く異なるものです。
(中略)
 また、授業のあり方は、炙る、茹でる、炒る、蒸かす、膾、干す・発酵というように、一回の授業を一つの調理法に特化することで、多様な調理方法を比較しつつ理解を深められるようにしました。私なりの調理法の授業です。
『一汁一菜でよいと至るまで』 p207-208

と、あるように家庭料理での調理方法の意味が解説された本である。私は行動にはすべて意味づけをしたい、自分で説明できるようになりたいタイプなので、ぴったりの本であった。

 

中身は料理書らしからぬ文字だらけ。レシピというよりは、調理法の解説が主眼であり、基礎技術の本である。

ポイントのところで意味の話がされてるのがよい

いい本だと思うのだが、残念ながら絶版している。古書でなら手に入る。
私はまだ全部読んでないが、ぱらぱらめくって土日に修行をしていくつもりだ。

思い出の薄い料理を作るのは難しい

ただ、個人的には、この本の料理をみてもピンとこないものが多かった。思うに、実家での食事経験の問題である。

実家の料理、特に和食がおいしかった場合は、こういう本を見て、これを作ろう!と思えるのかもしれないが、私の実家はそうではなかった。

母の料理はあまりおいしくなかった。まずくはないのだが、おいしくはない。これは自分で料理をするようになってから気づいた。私のほうが料理うまいじゃん、と。

汁物にしても、煮物にしても母の料理はなんとも微妙だった。だから私の体験として、家庭料理の和食にはいい思い出がない。印象が残っていないので、これを作ろう、という気にはならないのだ。

 

幸いにも妻氏の和食経験はよさそうだった。つまり妻氏の母の作る和食はおいしく、妻氏はこれがおいしかった等々の思い出を持っているのである。妻氏の体験・印象をもとに献立を作り、自分の家庭料理の体験を更新していく。この方法で、実家の体験を補えるのではないか。

食事体験は文化資本である

このように、実家での経験はばかにならない。まさに文化資本である。

核家族の世代において、ふつうは一つの家庭しか経験しない。経験が一つしかないからそれが当たり前だと思いこむ。相対化されるのは結婚やシェアハウスなどの共同生活を通してのみ。

共同生活は暗黙的な経験同士がぶつかり合う場となる。自分の経験が、ある特殊な一例であることに気づける人は少ない。核家族生活で培われた癖・感覚は容易に覆せない。癖は無意識に行われるから。

 

幸い我が家は合理主義の精神によって一汁一菜を主軸にできた。時間がないから、という理由で合理化をすると、癖は排除できる。これで数年間、おいしく健康に過ごせているので問題はない。

しかし、世の中ではそうではないらしい。一汁一菜を勧めるとたいてい、毎日同じものを食べたくない、と言われる。味噌汁は毎日同じように作っても、微妙な差異が出るものだが、消費社会は小さな差異を潰して大きな差異を消費するものである。消費者にとって満足できないのも理解できる。

 

一汁一菜でよいのに、なぜ私は改めて和食をやりたがっているのか。妻氏の実家の異文化を知りたいのが一つ、単に技術を高めたいのがもう一つ、だろうか。

前者はわかりやすい。妻氏のほうがすぐれた文化資本を持っているようにみえるので*1、それを私も継受したいという話。後者は趣味の問題。私はたぶん料理が好きなのである。これまでブログにも食の話ばかり書いてきたことからも明らか。趣味として、和食をやろうとしているのだろう。

近況

先週日曜日に広島での結婚式から帰ってきて翌日を休みにした。週報とアシスタント作業をしていた。火曜日には会社で健康診断。昼前までの絶食がきつかった。そのまま夕方まで仕事をした。

水木は在宅勤務をして実装をがんばっていたと思う。空いた時間にはアシスタント作業をしていた。金曜日朝が関西コミティア新刊の締切りだった。アシスタント作業は水曜日に終わらせて、木曜日は雑務サポートをしていた。

なんとか徹夜をせずに本ができた。高速に同人誌が刷られてもう家に届いている。半分はイベント会場に着弾したはず。明日、19日の関西コミティアで頒布をする。台風でどうなるかな、と思っていたが開催はするようだ。珍しく京都での開催なので帰れるとは思う。

金曜日も出社。サブ業務をうおーっとやっていた。19時までがんばったが片付かずに退勤。来週なんとかしないといけない。この頃業務での書き物の量が増えており、自作アウトラインプロセッサが活躍している。

土曜日は妻氏の実家へ。遺品回収の立ち会いをしていた。故人には工作趣味があったようで、謎の木工物体がたくさん引き取られていった。妻氏と一緒にPCサポートやSwitchBot人感センサーのセットアップをした。

今日は買い物と昼寝で終わった。ちょっと体調が悪くなってきており、イベントごとに弱いのを自覚する。明日、コミティアから帰ってきたらまた寝まくるであろう。

*1:ただし妻氏は料理がほとんどできない